ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 374 2016-11-24

平成 28 年 有床診療所 設備投資現状調査
(平成 27 年実施 有床診療所の現状調査 追加調査)

角田 政

 

【背景と目的】

  • 平成 29 年 4 月に予定されていた消費税率 10%への引上げが、平成 31 年 10 月に、再度延期されることとなり、医療機関においては、医療の消費税問題の抜本的な解決の先送りが懸念されるとともに、当面の議論が高額な設備投資に対する手当に限定されることを危惧する声が聞かれる。
  • 有床診療所の設備投資の現状を把握し、医療機関の設備整備を支える施策、特に高額な設備投資にかかる負担が大きいとの指摘を踏まえた税制の構築に資する基礎資料を得ることを目的に、調査を実施した。

【調査の概要】

  • 調査は日本医師会と全国有床診療所連絡協議会の共同で実施した。
  • 調査対象は、全国有床診療所連絡協議会会員施設のうち、「平成 27 年 有床診療所の現状調査」の「財務票」に回答した 340 施設。有効回答数は 213(有効回答率は 62.6%)。

【結果と考察】

  • 過去 3 年間(2013 年 4 月~2016 年 3 月)において、取得価額 100 万円以上の投資が、件数で全体の 5 割、金額で全体の 9 割を占め、300 万円以上の投資が、件数で 2 割、金額で 8 割弱を占めた。1,000 万円以上や 1 億円以上の設備投資を行った施設もあった。
  • 消費税引き上げ前に、特に高額な投資が多く発生し、引上げ直後には投資が減少する傾向が確認された。
  • 1施設当たり年間設備投資額は、全体では 900 万円弱から 1,000 万円強で推移し、大きな変動は認められないものの、建物・建物附属設備、器具備品などの資産分類別にみると、年度により 2 倍を超す大きな変動も発生している。
  • 投資額比率(投資額/収益額)は、平均値が 3.0%であるのに対し、2.5%以下の施設が極めて多い一方、50%超、100%超の極端に高い施設も少数存在する。
  • 設備投資は、施設ごと、年度ごとのバラつきが大きく、設備投資に係る消費税を診療報酬によって的確に補填することは困難であることが、改めて確認された。
  • 次の消費税率引上げ時に、医療に係る消費税問題の抜本的な解決が図られるとしても、次の税率引上げまでの期間に行われる設備投資に対しても減税措置等を講じ、抜本解決までの橋渡しをすることが必要である。
  • 「高額な設備投資」がどのように定義されるとしても、有床診療所においても一定の高額な投資が発生しており、減税措置等の対象とすべきである。

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