ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 470 2023-02-07

地理情報システム(GIS)による医療アクセス分析:
福岡県および九州地方全体における三次救急医療へのアクセシビリティ

清水 麻生

坂口 一樹

森 宏一郎

 

ポイント
◆ 本稿の目的は、地理情報システム(GIS)を用いて、福岡県および九州地方全体の三次救急医療へのアクセスのしやすさ(アクセシビリティ)を地図上に可視化することである。現状(2020年)分析に加え、将来(2040年)のアクセス状況のシミュレーション分析、併せて近畿地方との比較を行った。
◆ 三次救急医療へのアクセシビリティの分析と評価にあたっては、医療機関から道のり30km圏内をアクセス圏内と定義し、①三次救急病院へのアクセシビリティ、②三次救急病院とPCI 実施医療機関のアクセシビリティについて、500mメッシュ単位での相対評価で、それぞれ地図上に可視化した。
◆ 主な分析結果は、以下のとおり:
◇ 福岡県内のアクセシビリティは、概ね県内全域でカバーされていると評価できる。ただし、人口当たりのアクセシビリティ指標でみると、県庁所在地である福岡市内のアクセシビリティは相対的に低い。また、将来は人口減少によって、人口当たりのアクセシビリティ指標が高くなる地域が拡大する。しかし、居住人口がある離島と中山間地域に、アクセシビリティがゼロのエリアが残ると予測される。
◇ 九州地方全体では、PCI実施医療機関の存在によって、広く三次救急医療へのアクセシビリティが確保されている。福岡・佐賀・長崎以外では三次救急病院だけではカバーしきれない地域が広範囲に存在するが、PCI実施医療機関を加えて分析すると、離島・中山間地域や沿岸の一部を除けば、三次救急医療へのアクセシビリティが確保されている状況が把握できる。
◇ PCI実施医療機関の存在によって、広く三次救急医療へのアクセシビリティが確保されるようになる状況は近畿地方も同様であるが、三次救急医療を支えるPCI実施医療機関の役割は近畿地方よりも九州地方の方が大きい。
◆ 分析結果から3 点が示唆される。①将来にわたって三次救急医療を担うPCI実施医療機関の重要性、②都市圏における人口当たりアクセシビリティ指標の動向に注視する必要性、③地方創生や地域活性化の文脈における医療アクセスの役割の3つである。

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