ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 312 2014-06-17

国際連合における健康権の視点から観た
東日本大震災・原発事故の被災者支援に関する研究

 

 2011 年 3 月 11 日の東日本大震災、および東京電力福島第一原子力発電所事故(震災・原発事故)の直後、国は福島第一原発から半径 20km 圏内を警戒区域とし、段階的に区域の再編が行われた。その約 3 年後も 136,780 人の福島県民が、県内(2014 年 2 月 12 日時点88,416 人)および県外(同年 1 月 16 日時点 48,364 人)で避難生活を送る。警戒区域外でも、低線量の放射線やホットスポット(高濃度の放射能汚染地域)が確認されている。第 4 回福島県民世論調査では、回答者の 68.5%(483 人)が放射線を気にしていた(2013 年 3 月 27 日)。
 本研究が中心に据える健康権(達成可能な最高水準の心身の健康を享受する権利)は、基本的人権の一つである。我が国は、健康権を規定する社会権規約を 1979 年に批准している。2012 年 11 月、国際連合(国連)特別報告者が震災・原発事故の被災地を訪問し、2013 年 5 月、国連に健康権に関する報告書を提出したところである。
 2011 年 3 月の震災・原発事故以降、災害医療や被災者支援につき様々な対策や調査研究が実施されてきた。一方、我が国では健康権に馴染みが薄いこともあり、平常時における健康権の指針の活用や、震災・原発事故後の健康権の状況を把握する調査研究は限定的であった。
 このような状況を鑑み、本研究では、震災・原発事故後の健康権に関するニーズを被災者に尋ねた。同時に、保健医療サービス・医薬品の提供に係る計画策定および実施機関(国および地方自治体・医療機関・支援団体)に健康権の支援状況を聞いた。
 世界が経験したことのない複合災害(震災・原発事故)を受け、政府は順次対策を講じてきた。また、福島県内の地方自治体・保健医療機関・支援担当者の多くは、自らも被災者でありながら、試行錯誤を重ね住民・患者の生命や健康を守る措置を取ってきた。

 本ワーキングペーパーは、以上のような国連システム下で活用されている健康権の指針等を活用した、震災・原発事故被災者の支援のあり方の一考察をまとめたものである。

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