ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 328 2014-10-24

薬局等でのセルフメディケーションの現状と課題について
-自己採血検査を中心にー

 

  • 政府の成長戦略の下、セルフメディケーションの推進にむけた動きが加速している。そのひとつが自己採血検査である。
  • 今回、薬局等で自己採血検査を体験してみたが、あちこちに血液が付着してしまい(あくまで筆者の例)、安全性対策がやや不十分ではないかと思われた。また、それほど簡便でも手軽でもなかったが、今後拡大する可能性はある。
  • 薬剤師や薬局が増加しており、さらには薬局との提携を進めているコンビニが新たな市場を必要としているからである。たとえ、自己採血検査で採算がとれなくても、薬局等は貴重な個人情報を含む顧客データを手にすることができる。
  • しかし、セルフメディケーション以前に、「日本再興戦略」にも明記されているように、まずは健診受診率の向上に注力すべきである。
  • 現在の自己採血検査についても安全性確保対策を強化すべきだ。まず、検体測定室のガイドラインを順守しているかどうかを監視する仕組みを求めたい。
  • 検体測定室に該当せず野放しになっているものもある。検体測定を行わない薬局等での自己採血や、通販の検査キットであり、この中には遺伝子検査ビジネスもある。これらは、その場で検体を測定しないため規制がない。しかし、血液については病原性ウィルス等への感染のおそれもあり、検体採取自体が危険を伴う。利用者の安全を守るため、検体採取について、きめ細かいルールが必要である。
  • 現在は、「自己」採血であるが、国家戦略特区で、薬剤師等が穿刺以外の行為を行えるようにしてほしいという要望が出ている。この後には、薬剤師等が穿刺も行えるようにという要望も出るかもしれない。また薬剤師が親切心から薬学的知見を越えた、医学的判断も加えたアドバイスを行うかもしれないし、他の職種もそういったサービスを行うようになるかもしれない。
  • セルフメディケーションはいまだその定義も確立しておらず、国民のコンセンサスも得られていない。その中で、セルフメディケーションを推進することは医療をビジネスに変質させるおそれもある。どこまでがセルフメディケーションなのか、どこからが診療なのか、早急な再定義が求められる。今のままでは、診療行為がなし崩し的に周辺業務に流出していく懸念がある。

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