ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 330 2014-12-16

2014 年度診療報酬改定に係る診療所調査結果
-かかりつけ医機能と在宅医療を中心に-

 

2014 年度診療報酬改定の影響を把握するため、2014 年 10 月~11 月に診療所開設者・管理者にアンケート調査を実施した。回答数は 1,519人(回答率 44.5%)である。

 

かかりつけ医機能

  • かかりつけ医にとって、あるいはかかりつけ医機能として、健康相談・管理、介護保険との関わりが重視されている。なお、診療科によって重視している項目が異なっており、すべての患者に対して必要なかかりつけ医機能のほか、患者特性(小児・高齢者、急性期・慢性期など)によって個別に必要なものがあることがうかがえる。
  • 介護保険については、かかりつけ医として主治医意見書の作成などを通じて介護保険に係ることが重要であると認識されている。ただし、診療所自体が介護保険の体制を整備(たとえば、「医師が介護支援専門員の資格を保有」、「指定居宅介護支援事業者・常勤介護支援専門員の配置」)することはそれほど重視されていない。

処方

  • 現在院内処方の診療所の中には、今後院内処方を継続するかどうか未定、無回答のところが 4 割近くある。今回創設された地域包括診療料および加算は、院内処方を原則としており、これを鑑みれば、現在院内処方の診療所が、今後院内処方を継続できるような支援も必要なのではないかと考えられる。

在宅医療

  • 在宅医療の最大の障壁は「緊急時の対応」である。体力面での不安も大きく、在宅医療を担う診療所医師の業務負担軽減も必要である。
  • 在宅患者訪問診療料は、1 人の患者に対して 1 つの保険医療機関しか算定できないため、内科や外科の主治医が算定するケースが多いと推察されるが、今回の調査で、内科や外科以外にも、現在さまざまな診療科で在宅医療に取り組んでいることが明らかになった。
  • 在宅医療に前向きなグループは、重症患者に高度な在宅医療を提供するなどしていて、在宅医療のコスト負担が重荷になっている。この面での財源確保も不可欠である。
  • これから在宅医療に参入しようとする医師は、在宅医療について相談できる医師を求めており、地域医師会の先輩医師のサポートが期待される。
  • 在支診以外の診療所も相当数の緊急往診、在宅看取りを担っている。
  • 全体としては撤退したサ高住等よりも、新たに訪問するようになったサ高住等のほうが多かった。診療報酬改定後、同一日の訪問診療が差し控えられ、地域で複数の医師が連携してサ高住等の訪問診療を行うようになったこと、サ高住等そのものが増加していることなどが考えられる。

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