ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 333 2015-02-03

民間医療保険・がん保険の現状について

 

  • 民間の医療保険・がん保険が普及している。生命保険会社が不当な利益を得ているという見方もあるが、民間保険は公的医療保険とは異なる点を理解してその経営実態を冷静に判断する必要がある。ただ、生命保険会社は、当然に営利を追求する。利益の一部は株主への配当に回され、外資系企業では利益の一部を本店に送金する。生命保険会社の保険料は広告宣伝費などにも使われる。将来の給付に備えた準備金は外国債の購入を通じて海外にも流出している。そして、民間第三分野の保険料(年換算)は、公的医療保険の被保険者のそれの半分近くの多さに達している。
  • 公的医療保険には高額療養費制度があるが、治療が長期にわたる場合には医療費負担が重くなること、民間の医療保険・がん保険は現金で給付され使途が自由であることから、休業時の生活保障や緒経費をまかなうものとして意義がある。
  • しかし、現在の民間医療保険・がん保険は公的医療保険を補完するわけではない。民間保険には、低所得者はまず加入することはできないからである。民間保険が普及してきたから、公的医療保険の役割を民間にシフトするという方向付けが安易に行われないよう願っている。
  • 生命保険会社は、国民皆保険の日本でプレーしている以上、外資系も含めて、節度をもって広告宣伝をしてほしい。また、民間生命保険会社の中には、公的医療保険についても説明しているところがある一方、厚生労働省が発信している情報の中に、「これを見れば公的医療保険がわかる」といえるものがない。国、保険者、民間生命保険会社が一体となって、国民(消費者)に公的医療保険についての説明ツールを作成するなど、丁寧な説明を行ってほしいと考える。

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