ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 335 2015-03-24

最近の雇用情勢および格差と医療・介護分野の関係について

 

  • 景気、雇用に回復の兆しはあるものの、若年層を取り巻く情勢はまだま だ厳しく、世代内格差が拡大している。健康保険料が支払えない世帯、 低所得ゆえに納税できない世帯、病気が重症化、慢性化しているとみら れるケースもある。高齢者は働く意欲はあるものの、労働力としてはそ れほど期待されていない。
  • 貧困層が増えると公的社会支出が増加する。たとえば医療では生活保護 の医療扶助(支出)が増加する。その一方で、健康保険料の収納率(収 入)は低下する。国民健康保険の場合、保険料を支払えず資格証明書の 交付を受けると、いったん全額自己負担が必要なため、受診抑制、重症 化、医療費の高騰につながりかねない。
  • 医療・福祉(介護を含む)はこれからの高齢社会にあって需要が増大 する。医療はサービス業の中では生産波及効果も高い。医療・福祉に財 源を投入することで雇用の場を提供できる。そこでは、高齢者も労働力 となりうるだろう。高齢者が仕事をもって元気に働くことのできる期間 を延伸し、平均寿命と健康寿命の差を縮小することができれば、医療へ の受療を減らせる可能性もある。
  • 貧困・格差対策、子ども・子育て支援、医療、介護等はそれぞれが非常 に重い課題である。社会保障・税一体改革でその大筋の方向性は示され ているとはいえ、たとえば 2014 年度予算、2015 年度予算の配分はどの ように決定されたのだろうか。これまで以上に分野横断的な取り組みを 進め、その検討プロセスについても、さらに国民の理解が進むように示 す必要があるのではないだろうか。

ダウンロード  (約 1 MB)