ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 348 2015-10-05

医療提供体制のこれまで

前田 由美子

 

  • 地域医療構想策定のスタートにあたり、医療提供体制のこれまでを振り返ってみた。
  • 最近 10 年間で、病院数・病床数は約 7%減少した。すでにこれまでに病院は相当数淘汰・再編され、多大な影響を被っている地域も少なくないと推察される。地域医療構想の実現にむけ、まさにじっくりと取り組まなければ、地域医療のほころびが深刻化するところも出てくるだろう。
  • 大病院への医療機能の集約化が進み、小規模病院や有床診療所が減少している。全体としては医療資源の効率化が進んでいるといえるかもしれないし、医療機能の集約化は機能強化を通じて安全性を向上させる可能性もあるが、患者アクセスは低下する。地域包括ケアで、住み慣れた地域で最後まで暮らすことを目指す中、「身近な」病院や診療所がなくなっているという地域が出てきている。
  • 医療資源に、さまざまな地域差があることを再確認した。ほとんどの地域差は容易に説明がつかないものであった。また、いくつかの医療資源の地域差の経年変化には動きは見られなかった。おそらく、地域差はある程度は残るものであり、それが地域の個性なのではないだろうか。是正すべき地域差とそうではない地域差を見極める必要がある。
  • 介護サービスでは、営利企業のシェアが拡大している。しかし、過去の調査から営利企業は不採算地域・不採算事業から比較的容易に撤退する傾向が見られる。在宅医療推進のためには介護サービスの充実が伴わなければならないが、営利企業に委ねると、地方では介護過疎になりかねない。非営利の経営を支える仕組みが必要である。

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