ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 350 2015-11-02

勤務先の病院選択において若手医師が考慮する要因の研究
:医師不足・偏在問題解消の政策へ向けて

 

  • 本ワーキングペーパーでは「若手医師たちはどのような勤務条件をどの程度重視しているのか?」という問いに対して、定量的な答えを与えている。若手医師として、卒後10年未満の医師を対象とし、詳細な勤務条件を与えたうえで勤務先病院の仮想的選択をしてもらうという社会科学的な実験を通じて、その問いに答えた。
  • 実験データとして、1,302人の若手医師から合計26,040件の回答を回収した。Probitモデルを用いて得られたデータを多変量解析し、診療科別、男女別、地域別、出身大学別(国公立or 私立)等の区分けにおいて、勤務先選択条件の重要度を定量的に比較検討した。それらの分析結果を手掛かりに、現実の医師不足・偏在問題の解消に向けた政策的インプリケーションを導出した。
  • 主な分析結果は3つある。(1)「私立大学出身者のグループの大都市圏志向」、(2)「年収や当直回数、同科の同僚の数、救急病院であるか否かに対する男女の志向の違い」、(3)「過疎地・へき地・離島を忌避する傾向がほぼ共通する一方で、大都市圏よりもむしろ地方中核都市や地方中小都市での勤務を志向するグループがあること」。これらに着目し、現実的な医師不足・偏在問題解消策を具体的に検討することが可能である。
  • さらに、本研究が明らかにした定量的なデータ分析結果を用いて、診療科別や勤務地別などの属性ごとに、ピンポイントで条件間の相殺を考えることで、医師を確保する確率を保つ(または引き上げる)対策を打つことができる。

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