ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 355 2016-01-08

TKC医業経営指標に基づく経営動態分析
−2014年4月〜2015年3月期決算−

角田 政

 

  • TKC医業経営指標からみる2014年度における民間医療機関の経常利益率は、病院(中小規模が中心)と有床診療所は(法人、個人ともに)低下し、無床診療所は、法人は低下、個人はほぼ横ばいであった。
    病院、診療所ともに、給与費率の変動が利益率に与える影響が大きく、全体では利益率が低下傾向の中で、役員報酬よりも従事者の人件費に優先的に経営資源を充てており、特に一般病院は役員報酬を減らして対応している。
  • 病院の保険診療収益は1.4%の微増にとどまり、経常利益率は低いままである。
    病院種類別にみると、保険診療収益は、内科系病院が+1.1%の微増、外科系病院は+0.6%に止まりほぼ横ばいであった。法人の経常利益率は、精神科病院では改善がみられたが、依然として5%に満たない低い水準であり、一般病院は客体数の少ない産婦人科系を除き、いずれも5%未満の水準からさらに低下し、厳しさを増している。
    一般病院の利益率が低下した主な要因は、従事者給与等の上昇であり、民間の中小一般病院において、人員の確保や処遇の改善等に係る人件費の上昇に見合う収益が確保できていない。
  • 有床診療所は、医業収益が0.6%の微増にとどまる中、従事者給与費等が上昇し、経常利益率は、法人、個人とも低下した。
    診療科別の経常利益率は、法人、個人とも、外科が最も低かった。
  • 無床診療所(院内処方・院外処方計)は、医業収益が+0.3%でほぼ横ばい、経常利益率は、法人は低下、個人はほぼ横ばいであった。
    診療科別では、内科、外科、耳鼻咽喉科で保険診療収益が前年比マイナスであり、産婦人科、小児科、精神科、耳鼻咽喉科の4科は法人の経常利益率が5%に満たない状況であった。これらは損益分岐点比率も非常に高い。
    院内処方と院外処方を対比すると、医業収益の前年比は、院外処方は若干のプラスであったのに対し、院内処方は若干のマイナスであった。院内処方のほうが、医業収益が前年比マイナスとなった診療科が多くみられた。

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