ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 358 2016-03-03

診療補助行為に関する法的整理

 

  • 診療補助行為は、看護師・准看護師がすべての行為ができると認められ(保助看法 31 条、32 条)、また、診療放射線技師、理学療法士、作業療法士、臨床検査技師、視能訓練士、臨床工学技士、義肢装具士、救急救命士、言語聴覚士の9職種においては、それぞれの専門領域で、診療補助行為ができる。
  • 調剤行為は薬剤師法 19 条においてのみ規律される、という見解もあるが、特別刑法の見地からは必ずしも一般的な解釈ではなく、むしろ、「薬剤の調剤・投与は、治療の一方法であるが、調剤は医師とともに、資格のある薬剤師にも認められている」と解するのが通説的な理解である。なお、大審院(最高裁)判例も通説と同様の立論で、薬剤師が患者の容態を聞いて調剤・供与した行為を、調剤行為まで含めて医師法違反と判示している。すなわち、判例理論も通説と同様の立場を取っている。
  • 現行薬剤師法 19 条の起源である、1955 年の「医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律」は議員立法かつ衆議院で修正されたため、医師法 17 条との関係性は、必ずしも明確にされていない。同条を「医薬分業を規定したもの」と解釈する向きもあるが、立法経緯をみる限り、単純にそのようには断定できない(参考資料2参照)。
  • 医師の不足する領域や医師の勤務環境の改善を図るため、米国の PA 制度を我が国にも導入しようとする向きもあるが、同制度は我が国の文化にはなじまないものと思われる。我が国の医療現場の実態からすると、「代替」ではなく「補完」が重要になる。その際には、まず、「既存資格の活用」という視点が重要である。

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