ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 361 2016-05-26

2014年・2015年(2013年度・2014年度実績)
病院における低炭素社会実行計画フォローアップ研究
-2030年・2050年に向けた国の中期 ・長期目標達成のため国等は
病院業界の省エネ推進支援を-

 

 本研究は、厚生労働省から「病院における地球温暖化対策推進協議会」に求められた、「2014年・2015年(2013年度・2014年度実績)病院における低炭素社会実行計画フォローアップ報告」の、報告案策定のための研究です。
 このため、本研究の文章は「病院における地球温暖化対策推進協議会」(日本医師会・日本病院会・全日本病院協会・日本精神科病院協会・日本医療法人協会及び東京都医師会)が主体の表現形態をとっています。
 そこで本研究は、2006年度を基準年とする新たな「病院における低炭素社会実行計画」について、COP21のパリ協定における、我が国の約束草案を踏まえた数値目標の設定や、2013年度・2014年度における目標達成度や温暖化対策の取組み状況を中心に、アンケート実態調査によるフォローアップ調査結果をまとめたものです。なお、本研究では「病院」とは「私立病院」を指します。「病院における低炭素社会実行計画の2030年度削減目標」は、下記の目標を設定しました。

【病院における低炭素社会実行計画の2030年度削減目標】
数値目標指標は、エネルギー起源の二酸化炭素(CO2)排出原単位(病院延べ床面積当りのCO2排出量、単位はCO2換算のkg-CO2/m2)とし、基準年度を2006年度(地球温暖化対策自主行動計画と同じ)として、2030年度までの24年間で、25.0%削減(対前年削減率1.19%)することを目指す。


 この2030年度削減目標である25%削減は、パリ協定に提出した我が国の約束草案の目標値(2006年度比換算24.3%減)を上回る水準です。こうした目標に対し、2014年度のCO2排出原単位の実績は対前年比3.8%減で、基準年度2006年度<100.0>比では78.7となり、8年間の年率平均にすると2.95%減であり、目標とした1.19%減を大きく上回って減少しました。
 しかし、その一方で電力・都市ガス料金の高騰及び再生可能エネルギー賦課金の急増があり、病院の光熱費が大きな影響を受け、病院経営を大きく圧迫することとなりました。このため、病院としては「補助・支援・融資制度等の拡充」や「電気料金の高騰や再生可能エネルギー賦課金の増大に対する医療面での対応」等を中心とする、国の支援策等を求めるものです。
 また、「新たな『(仮)地球温暖化対策のための厚生労働省電力・ガスユーザー勉強会』の設置」や「『再エネ特措法改正』後も固定価格買取制度の問題解消」等を中心とする、国の制度的枠組に関する提言を行いました。この勉強会はエネルギーの提供者や行政だけで、地球温暖化対策や省エネを推進するのではなく、エネルギー・ユーザーもその内容・政策等を理解・納得した上で進めることが重要なためです。
 さらに、「今後の重要課題としての外部環境の整備等」を提言するものです。

1)2030年に向けた電力提供事業者の「使用端排出係数」削減率の大幅な低減への見直しを
2)国は具体的な「(仮)2050年CO2の80%削減目標実現のための対応支援構想」の策定・実行を
3)「電力システム改革」の地球温暖化対策との政策的整合性と進捗実態の定常的なフォローアップを


 なお本研究は、平成27年度厚生労働科学研究費補助金(研究課題/CO2排出を抑制しながら医療サービスの質を確保する方策に関する研究)を、研究費の一部として交付された研究です。

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