ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 364 2016-07-28

過去の医療・介護に係る長期推計と現状

前田 由美子

 

  • 社会保障・税一体改革にむけ、2011 年 6 月に社会保障改革に関する集中検討会議(当時)に提出された医療・介護の将来推計(2011 年推計)に示されている 2015 年度の姿と 2015 年度の実績(見込み)を比較した。
  • 入院単価は経済成長にそった伸びは一定程度あったが、2011 年推計で想定していた充実分(単価自体の引き上げ)は見られなかった。
  • 入院患者数が 2011 年推計を下回り、病床数が 2011 年推計を先取りして減少している。介護施設サービスも 2011 年推計に未達である。在宅医療の充実も十分ではない。介護離職して支えざるを得なかったり、公的保険外の民間介護サービスに頼らざるを得なかったりしているのではないかという懸念がある。
  • 外来単価は 2011 年推計の水準とほぼ同じであったが、伸びたのは薬剤料であり、かかりつけ医、在宅医療の重要性が認識されている中、プライマリ・ケアに対する医療費の配分は縮小している。
  • 外来患者数は病院から診療所への移行が進まず、総数でも 2011 年推計に未達である。長期投薬の影響が大きい。
  • 2011 年推計が描いた 2015 年度の姿と実際の姿は、さまざまな乖離がある。2011 年推計で外来、在宅医療、介護はあまり精緻に推計されていなかったこともあるが、国(厚生労働省)は現状を踏まえ、将来推計の改定版を示すべきではないだろうか。

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