ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 366 2016-08-26

薬価算定方式の現状と課題

前田 由美子

 

  • 遺伝子組み換えで高額な医薬品や、対象患者が多い生活習慣病治療薬で市場規模が大きい医薬品が登場している。2 年ごとの薬価改定で、薬価の引き下げを行っているが、薬価算定方式の大きな枠組みは、1982 年に作られたものである。また、効能・効果や用法・用量が追加され、実質的に製造原価が下がっても、薬価改定年以外には対応できない。
  • 新医薬品は、薬事・食品衛生審議会で薬事承認されるが、この時点でコストデータが参照されることはない。薬価は、薬価算定組織で検討し、中医協で承認されるが、薬価算定組織では医療保険財政全体への影響は考慮しない上、薬事承認から原則 60 日で薬価収載するルールである。
  • 新医薬品は基本的には類似薬効比較方式で計算することになっているが、最近 5 か年を見ると、4 分の 1 は原価計算方式である。原価計算方式では、原材料以外は事業内容(主力製品が先発品か、後発品か、OTCか)にかかわらず上場企業の業界平均を上限とする。類似薬効比較方式にも多種多様な加算がある。一方で、薬価改定の際に突然、大幅に引き下げられることもある。
  • 厚生労働省は、薬価の在り方全般の見直し、最適使用推進ガイドラインの医療保険制度上への位置づけを提案している。
  • 最適使用推進ガイドラインで対象患者を限定することになれば、対象外の患者への使用の在り方について、保険外併用療養、ひいては混合診療に係る議論につながるので、慎重な対応が必要である。
  • 薬価制度を全般的に見直すにあたっては、「薬事承認から原則 60 日で薬価収載」ありきではなく、薬事承認の段階から経済性を確認しつつ、薬事承認から薬価算定までを一体的に行うべきではないかと考える。
  • また、新薬創出のイノベーションは、診療報酬以外の枠組み、たとえば製薬企業への新薬創出支援補助金として一般財源で対応することはできないだろうか。
  • 現在、公的医療保険下の薬剤費がいくらかを捕捉する統計がなく、真の薬剤料がどのような傾向にあるかをわからずに、薬価算定の在り方を議論している状態である。厚生労働省は薬剤費(薬価ベース)全体を集計する仕組みを早急に構築すべきである。

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