ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 370 2016-09-16

医療関連データの国際比較
-OECD Health Statistics 2016-

前田 由美子

 

  • OECD の保健医療支出は、OECD が提供する方法(SHA)に準拠して各国が推計を行ったものである。2011 年に OECD が SHA1.0 から SHA2011 への改訂を行い、日本では訪問・通所介護、介護老人福祉施設(特養)等に集計範囲が広がり、日本の対 GDP 保健医療支出が上昇した。
  • 保健医療制度は国によって異なり、すべての国が同じ手法で保健医療支出等を推計しているわけではない。日本でも全額自費医療は捕捉できていない。結局のところ、OECD データによる国際比較は目安でしかないが、諸外国との傾向の違いを見ることで、何らかの示唆を得られる可能性もあることから、本稿では国際比較を図示している。
  • SHA2011 改訂の要因を除くと、日本の診療技術料やサービス料は抑制的であるが、医薬品支出が増加している。また日本は CT、MRI の台数が多い。そして、医療機器のコスト(減価償却費)はおおむね診療報酬でまかなわれている。日本では、医薬品や医療機器が保健医療支出を押し上げている可能性がある。
  • 為替レートの影響もあるが、日本は高齢化が進んでいる割には、1 人当たり保健医療支出はそれほど高くない。
  • 日本の受診回数の多さがしばしば問題にされるが、受診 1 回当たり単価が低いため、外来医療費はそれほど高くない。外来医療はいつでも受診できる上、効率的に提供されている可能性がある。
  • 国際比較データは不完全ではあるが、興味深いものもあり、さまざまなところでとり上げられている。各国の保健医療制度をすべて正しく記載することは現実的ではないにせよ、丁寧な注釈をつけつつ、冷静に国際比較をすることの重要性を強く感じている。

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