ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 369 2016-10-13

若手医師の診療科選択プロセスに関する調査

 

  • 若手医師の診療科選択プロセスの実態把握を目的とし、初期研修医を対象に、かつて選択候補にあった診療科とその時々で重視した要因、得た参考情報等を、現在の視点から振り返ってアンケートに回答してもらうことで明らかにした。
  • 自身の興味関心はもとより、自分が展望するライフスタイルと、おそらくそれ以上に医師としてのスキル向上やキャリア形成を重視しつつ、将来選択する診療科を決定しているというのが、調査結果から推察される若手医師の診療科選択のおおよその実態である。
  • 選択候補として考えているのは、個人差はあるものの、平均して2〜3診療科である。志願時に比べ、医学部入学後にいったん選択候補の数が増え、臨床実習が始まる5・6年時には絞り込まれ、初期研修時にはさらに絞り込まれる。初期研修時には9割弱の若手医師が、選択候補の数を3つ以内に絞り込んでいる。この傾向は男女共通であるが、男女別に見ると、女性のほうが男性よりも、選択候補としてより多くの診療科を考えている。
  • 回答者が実際に選択候補として挙げた診療科を見ると、志願時に比べて経年的に選択候補として挙げた者が増えている診療科/減っている診療科の違いが際立つ。例えば、選択候補を3択以内に絞り込んでいる者たちの間では、耳鼻咽喉科、放射線科、麻酔科、形成外科を選択候補とした割合は一貫して増加傾向だった一方、小児科、精神科を選択候補とした割合は一貫して減少傾向であった。これら2つの診療科グループ間にワークライフバランス実現の容易さの違いがあるとすれば、対象診療科を絞ったその実現への配慮がカギとなる。
  • また、調査結果からは、女性医師は診療科選択プロセスにおいて比較的選択肢の幅が広く、実家の診療科に縛られにくいという特性を持っており、男性医師に比べて診療科選択の柔軟性を有していることも明らかになった。近年、女性医師の割合は増加傾向にある。女性医師の特性や志向・選好を理解し、適切な職場環境の整備等を通じてその活躍の場を広げることも、医師不足・偏在問題の解消に向けた重要なカギのひとつだろう。

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