ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 371 2016-11-08

最近の医療費の動向とその配分

前田 由美子

 

  • 「概算医療費」(2015 年度)と「国民医療費」(2014 年度)をもとに最近の医療費の動向と配分を示した。

【医療費の動向】

  • 2015 年度の医療費の伸び 3.8%のうち、外来薬剤料(院内・院外)の伸びが 2%弱程度。このほか、診療報酬改定がない年では、診療報酬改定および人口増減・高齢化以外の医療費の伸びの半分は薬剤料の伸びによるもの。
  • 財源別では、事業主負担、後期高齢者の一部負担が減少している。後期高齢者は現役並み所得如何で一部負担割合が異なるが、現役並み所得の基準はずっと据え置かれている。
  • 病院の 1 施設当たり入院医療費すなわち入院収入の伸びは 2%程度である。2010 年度改定のような急性期病院優位の改定ももはやない。
  • 診療所の 1 施設当たり入院外医療費(外来収入)の伸びは、高額薬剤の院内処方でもない限り 1%を切る。
  • 製薬メーカーの行動として、より高額な新薬の販売に注力することは当然であり、市場拡大再算定の特例のような大胆な引き下げがない限り、今後も薬価は上昇しうる。
  • 処方せん 1 枚当たり調剤技術料の伸びは、医科 1 件当たり入院外医療費の伸びよりも高い。調剤料には長期処方が薬局に有利に働く仕組みも残っている。

【医療費の配分】

  • 2014 年度は医療費(医業収益)の 41 兆円のうち医療従事者の給与費が 19 兆円、医薬品卸・製薬メーカーへの医薬品費が 9 兆円、医療機器メーカー・建設事業者への設備関連費用が 6 兆円である(推計)。10 年前と比べて人件費が 49.1%から 47.0%に縮小し、医薬品費が 20.9%から 21.8%に上昇した。
  • 外来医療費の構成では、医科技術料が 2001 年度の 50.6%から 2015 年度には 44.2%に縮小し、薬剤料の割合が 29.0%から 36.2%に拡大した。
  • 医療費の医療機関への配分という視点で見てみると、10 年前と比べて診療所が 23.9%から 20.8%に減少し、薬局が 14.2%から 19.0%に増加した。医師から薬剤師へ医療費がシフトしている。

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