ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 377 2017-01-25

外来医療費の地域差についての一考察

前田 由美子

 

  • 「経済財政運営と改革の基本方針 2015」は、外来医療費の地域差是正を求めている。筆者もこれまで外来医療費の地域差について、さまざまな分析を行ってきたが、手ごたえのある結果は得られていない。ただ、市町村別の医療費をあれこれと眺める過程で、「気づき」もあったので、そのいくつかを紹介したい。
  • 本稿では、厚生労働省「医療費の地域差分析」の外来地域差指数(市町村国保の入院外・調剤年齢補正後データ)を用いている。地域差指数は、市町村(保険者)で異なる年齢構成を補正し、全国を 1 として指数化したものである。
  • 外来地域差指数が小さい市町村には、島しょ部や山間部が多い。通院できるところがなく、相対的に受診抑制状態になっているのではないか。
  • 外来地域差指数が大きい市町村の中には、人口(被保険者数)が少ないために平均値が高く出るところがある。このような市町村で、医療費の地域差の原因を深堀りしていくと、個人の特定につながる心配がある。
  • 地域差指数が大きいところは隣接した市町村でも高く、小さいところでは隣接した市町村でも低い。ひとかたまりで地理的つながりがあることは興味深い。
  • 政府は、外来医療費の地域差解消を求めている。しかし、外来医療費の地域差には机上の分析では説明がつかない多くの事情がある。機械的な分析だけではなく、地元の人々が額を寄せあってこそ、地域差の要因が見えてくるのではないだろうか。

ダウンロード  (約 4 MB)