ワーキングペーパー
ワーキングペーパーNo. 379 2017-03-29
マイナス金利政策1年と医療等への影響
- マイナス金利の起点は、日銀が銀行等の日銀への当座預金利子をマイナスにしたことである。
これを起点に国債金利がマイナスとなり、貸出金利・預金金利も低下した。
しかし、その低下幅は既に超低金利状態であったことから、限定的であった。 - 実質金利の低下や円安や株高効果で経済を刺激する成果が期待されたが、副作用のある政策を最も悪いタイミングで実行した形になり、日銀が期待したものとはかなり異なってしまった。
- 金融市場は動揺し、銀行や生保の運用や販売、さらに年金の債務評価に悪い影響を与えた。
最大の利益享受者は政府であるが、マイナス金利で財政規律が失われていくことが懸念される。 - 日銀が日本経済全体のバランスシート・リスクを負担する構図になる中、マイナス金利政策は、時間的猶予のない財政と連なった「時間との戦い」でもあるが、その「出口」は見えない。
- 医療分野には、これまでのところ、マイナス金利の「直接的」影響はあまり大きく無かった。
しかし、今後については、政策の先行き次第で大きな影響が出てくることがありえる。 - 財政問題≒社会保障問題への圧力の高まりの中で、マイナス金利政策を含めたアベノミクスがうまくいかないと、マクロ的な政策面・制度面から社会保障への適正化圧力が一層強まり、医療分野に対してマイナスの影響をもたらす可能性がある。
- 医業経営にとって気をつけなければならないのは、今のマイナス金利ではなく、将来、金利が上昇した時である。
借入金利が本格的に引き上げられたなら、医療機関によっては医業利益が失われ、経営が苦境に陥る恐れもあるだろう。 - マイナス金利政策の帰趨は、医療界・医業経営に対し、少なからぬ影響を及ぼす恐れがある。
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