ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 380 2017-05-24

病床数の地域差の背景と課題

前田 由美子

 

  • 病院病床数は、1985 年に第 1 次医療法改正でいわゆる病床規制が敷かれ るまで増え続けた。公立病院を含む公的医療機関の濫立はそれ以前から 問題視されていたが、抑制にはいたらなかった。
  • 人口 10 万対病床数は「西高東低」であることはよく知られているが、 そもそもはそうではなく、高度経済成長期の人口移動を経て形成された。 人口 10 万対病床数が多い県では、中小病院が多く、また中小病院が多 い県では民間病院が多い。大規模病院であれば一部ダウンサイジングで 対応可能である場合でも、中小民間病院では病院(組織)そのものの淘 汰になりかねないので、慎重な調整が必要である。
  • 公立病院は、1 公費が投入されていること、2 「新公立病院改革ガイ ドライン」で地域医療構想と整合的な改革を求めてられていること、3 施設の除却経費等に対する地方交付税措置があること、4 需要の変化 にあわせて適正化してこなかったところもあることから、民間病院と公 立病院が競合する地域では公立病院の病床機能の転換等を優先すべき である。
  • 病床数が多い地域は病院従事者が多く、地域の雇用を支えている。病床 機能の転換等による雇用の現場の混乱(特に転退職)や地方経済に与え る影響の大きさも考慮しておく必要がある。
  • 地域医療構想が目指す自主的な収れんを危ぶむ意見もあるが、これまで も事業環境の変化に対応して一定の収れんが進んできた。地域医療構想 は収れんを後押しするものとなるだろう。

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