ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 388 2017-09-04

介護サービス企業の2016年度決算

 

  • 上場企業の有価証券報告書等を元に介護サービスを提供する企業の現状について概観した。
  • 居宅サービスには参入規制がなくさまざまな業種が参入しており、営利企業が開設する事業者の割合も上昇している。
  • 本稿で採り上げた大手企業の多くは、M&Aの成果もあり売上を伸ばしている。しかし、収益性、安全性は一定の維持がされているとはいえ、上昇基調にあるとはいえず(といっても内部留保は積み増されているが)、企業は効率化を進めている。そのひとつが不採算拠点の閉鎖である。
  • 人員配置の見直しによって効率化を進めている企業もある。国の介護人材に対する処遇改善策も奏功して給与水準はやや上昇しているが、勤続年数は若干伸びているがまだまだ短く、離職率はなかなか低下していないのではないかと推察される。
  • 居宅サービスは、福祉用具貸与は別として生産性が比較的低く、生産性を上げるためには、売上規模を増やす必要がある。そのため需要を掘り起こして、介護費用の伸びを押し上げている可能性もある。
  • 過去10年間で保険、警備などの大手異業種のM&Aによる参入が進み、介護サービス提供者は大きく、大手異業種、介護専業(あるいは主力)大手、地域密着型の小規模事業所に分類される。現時点で、大手異業種と介護専業との間に明確な違いは見受けられない。どの類型の企業が地域で介護サービスをより安定的に供給するのか、引き続き注視したい。
  • 医療機関が開設する居宅系サービス事業所は減少しているが、株式会社立に比べて、はるかに持続的に経営されている。一方、営利企業では、不採算拠点の閉鎖により効率化を進めているところもある。医療法人や医師会が開設する介護サービス事業所の割合は減少しているが、今後、医療と介護の連携がより重要になることを踏まえれば、地域に密着している医療機関や医師会による介護サービスの提供も期待されよう。

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