ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 391 2017-11-17

診療所の医業収入としての医療費の動向
-「概算医療費」2016 年度実績と長期推移-

 

  • 厚生労働省「概算医療費」等を用いて医療費の長期推移を示した。特に、医療機関経営の参考に資するよう、「1 施設当たり」の医療費、受診延べ日数、実患者数も合わせて示した。
  • 入院外医療費について、技術料と薬剤料を分離する推計を行った。長期的に医科技術料が圧縮され、薬剤料の割合が増加している。
  • かかりつけ医の重要性が認識され、在宅医療が推進されているが(在宅医療費は入院外医療費である)、診療所 1 施設当たりの入院外医療費は、年平均 1%も伸びていない。さまざまな要因があるが、診療所収入が伸びないようであれば、診療所経営の成長はなく将来性もないだろう。
  • 診療所入院外では、長期処方によって 1 件当たり日数が減少し、1 施設当たりの医療費の伸びを抑制した。長期処方については診療報酬上の加算もあるが、先行調査で長期処方の問題点も指摘されており、今後どうするのか重要課題である。
  • 診療所入院では、1 日当たり医療費が伸びているが、診療報酬の影響だけでなく、施設数(有床診療所数)の減少によって、比較的規模の大きい施設や高度な医療技術を提供する施設が存続している影響も推察される。
  • 人口が減少している中で、診療所施設数が増加している診療科がある。そうした診療科では患者を分け合って医療費(医業収入)の伸びが抑制されていると見られる。過当競争を避けるために、新規開業の際に開業予定地域での医療提供状況や人口など需要見通しの情報を提供する仕組みも必要である。

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