ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 393 2017-11-17

国・公的医療機関の地域包括ケア病棟への参入状況と経営状況

前田 由美子

 

  • 国・公的医療機関の地域包括ケア病棟等への参入状況と入院基本料別の収益性について分析を行った。その際「7 対 1 のみ」「7 対 1 と地域包括ケア病棟のみ」(回復期リハビリテーション病棟等は含まない)の病院を抽出した。
  • 国・公的医療機関は、2010 年度の急性期入院医療に手厚い診療報酬改定で、病院経営は一息ついたが、その後は医業収入が伸び悩み、医業利益を圧迫している。直近では借入金依存度もやや上昇している。
  • 7 対 1 のみの病院は、2016 年度の医業収入は対前年度比マイナスか横ばいで、医業利益は赤字転落か(国立)、水面上ぎりぎりであった(JCHO)。 7 対 1 のみの病院では 2016 年度に赤字に転落した病院が少なくなく、かなり大規模でも多くの病院が苦戦している。
  • 国立、労災、日赤、済生会では総病床数 300 床前後かそれ以上の病院が地域包括ケア病棟を有している。10 対 1 で地域包括ケア病棟がある病院は JCHO では中小病院、済生会では中小ケアミックスの病院であり、民間中小病院と競合しているおそれがある。
  • 7 対 1 と地域包括ケア病棟のみの病院は、7 対 1 のみの病院と比べると医業利益率が若干ではあるが高かった。コスト削減のほか、病床稼働率が上昇したことも考えられる。◆ 地域包括ケア病棟入院料は、創設当初は病棟数が少ない中小病院の届出を想定していたが、現在では異なる姿になっている。地域の事情を踏まえつつ、民業圧迫にならないよう国・公的大規模急性期病院が担うべき機能をより明確にすべきである。
  • 10 対 1 は、サンプル数が少ないが、もっとも医業利益率が低かった。

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