ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 395 2017-12-06

「医療経済実態調査」(病院・診療所)の分析と考察

 

(病院)

  • 損益差額は一般病院で赤字が拡大、精神科病院では黒字から赤字に転落した。一般病院、精神科病院損益差額率は直近2事業年度回答方式を採用した第18回調査以降最低であった。
  • 医療法人の一般病院は黒字ではあるが、損益差額率は1.8%に過ぎず、再生産のための財源を確保できる状況にない。また、税引後利益率は1.4%に縮小する。一方、公立病院では損益差額率は▲13.7%であるが、一般会計からの繰入金等が5,000億円近くあり、税引後利益率(税は非課税)は▲3.2%にまで縮小する。
  • 一般病棟入院基本料 7対 1、10 対 1は、民間・公的病院でも、前回調査、今回調査いずれも連続して赤字である。
  • 中小民間病院は医業収益が減収であり、特に小規模の病院で黒字から赤字に転落した。
  • 療養病棟入院基本料2を算定する病院は、2016年度診療報酬改定での減算の影響で減収となり、赤字が拡大した。

(一般診療所)

  • 収益が増加した個人・入院収益ありを除いて、損益差額率が横ばいまたは低下した。個人・入院収益ありの収益の増加は、保険診療以外の収入増によるものであった。
  • 在宅療養支援診療所は、他と比べて給与費率が高く、損益差額率が低い。在宅医療を推進するために、十分な支援が必要である。

(収益性悪化の背景)

  • 一般病院では給与費率が上昇しているが、1人当たり平均給与費は伸びていない。一般病院では、医療の質の確保、患者ニーズの多様化に対応するため、さまざまな職種の人員が増加しているが、こうした多職種への評価が十分ではないと考えられる。
  • 一般診療所でも給与費率が上昇しているが、院長給与の伸びは過去3回の調査で連続してマイナスである。准看護師に比べて給与水準の高い看護師数が増加していることが要因ではないかと推察される。

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