ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 396 2017-12-26

看護職員等の医療職採用に関する諸問題:アンケート調査の分析と考察

 

  • 医師・看護職員等の確保に多大な労力・コストを費やす事例がある現状を踏まえ、職員の採用実態を把握するため、病院および診療所を対象にアンケート調査を実施した(対象施設数4,000、有効回答数844:有効回答率21.2%)。
  • 調査では、職員全般の採用に関わる紹介会社への依存度や採用関連コスト等に加え、看護職員に関して具体的な不足度合いと各施設の確保策の実情について回答を得た。回答結果を基に、施設属性による分析を行い、先行調査や各種統計等を参照しつつ、看護職員の採用に関する課題解決の方向性を考察した。
  • 職員全般の採用に関し、紹介会社への依存度(紹介会社の利用率、紹介手数料の総額や医業収益に占める割合等)は急速に高まっていた。
  • 看護職員は運営母体・病床規模・立地条件を問わず不足していた。その採用では、200床未満の中小病院が、最も厳しい状況にあった。
  • 各医療施設が運営する看護学生向けの奨学金制度にかかるコストは、紹介会社への紹介手数料を上回る規模であった。
  • 過疎地域では看護職員不足が特に厳しく、各医療施設の自助努力の限界が窺われた。
  • 看護職員不足発生の本質的な原因の一つは、公営事業者、特にナースセンターの活用不足にある。これを各医療施設の自助努力で補完する実状は、社会的不合理と考える。
  • 以上を踏まえ、検討課題として次の3つを提起する。
    1. ハローワークとナースセンターの強化を政策の最優先課題とし、今後新たに発生する離職者等を対象に、離職時の届出を「努力義務」から「義務」へ法改正する。
    2. 過疎地対策推進のため、行政レベルでの看護職員の地域誘導対策、具体的には過疎地域勤務に対する看護職員へのインセンティブ導入等の政策的支援を実施する。
    3. 各医療施設に発生する採用コスト、具体的には「紹介会社に支払われる紹介手数料」と「看護学生向け奨学金制度の運営コスト」を診療報酬に反映させるべきである。

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