ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 399 2017-12-25

TKC医業経営指標に基づく経営動態分析
  -2016年4月~2017年3月期決算-

角田 政

 

全体

 TKC医業経営指標からみる2016年度における民間医療機関の経常利益率は、病院(中小規模が中心)は低下し、診療所は、法人は低下し、個人はほぼ横ばい程度の改善にとどまった。
 法人では、一般病院でも、診療所でも、給与費率の上昇が利益率を圧迫している。特に一般病院と有床診療所は役員報酬を減らして対応しているが、それでも給与費率が上がり、利益率が低下している。従事者の確保や処遇の改善等に必要な収益が確保できていない状況である。

病院

 病院は、医業収益が横ばい程度の伸びにとどまり、法人の経常利益率はもともと低くなっていたものがさらに若干低くなっている。
 病院の診療科系統別にみると、精神科病院では医業収益も経常利益率も横ばいであった。一般病院の内科系では、医業収益がほぼ横ばいで経常利益率は低下、外科系、整形外科系では、医業収益が伸びて、経常利益率が改善した。それでも、法人の経常利益率は、いずれの区分でも5%に満たない低い水準である。
 本業の利益を表す医業利益率も低下しており、その主な要因は、従事者の給与等の上昇であった。

有床診療所

 有床診療所は、医業収益が0.3%のマイナス、保険診療収益は1.0%マイナス、診療科別でも軒並み減収となる中、従事者給与等が上昇し、法人の利益率は低下した。診療科別の経常利益率は、内科が最も低かった。

無床診療所

 無床診療所(院内処方・院外処方計)は、医業収益が+0.9%の微増にとどまり、経常利益率は、法人は若干低下、個人は若干上昇したが、全体としては、ほぼ横ばいと言ってよい。
 法人の診療科ごとの経常利益率は、産婦人科で改善がみられ、皮膚科と外科で悪化したほかは、小幅な動きにとどまった。なお、法人の経常利益率が5%に満たない低い水準の診療科が多い。個人の経常利益率は診療科別にみても大きな動きはなかった。
 院内処方は、医業収益の前年比がマイナスであり、各診療科とも院外処方に比べて経常利益率が低く、厳しい経営状況になっている。

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