ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 404 2018-02-16

医療機関経営における金融機関の有効活用に向けて:
インタビュー調査とマクロデータ分析

 

  • 医療業界および医療機関経営に対する金融機関側の見方を明らかにするため、金融機関等 8 社へのインタビュー調査を実施した。
    【医療業界への見方】地域活性化につながる成長分野と捉えている。業界の専門性・特殊性も実感しており、専門チームを作り組織的に対応している。ともに地域社会を支える仲間との認識がある。特に地方の中小病院の経営環境が厳しいとみている。
    【医療機関経営への見方】一般の事業会社と比べて特殊とみている。融資審査では、事業計画の実現可能性の他に、マネジメントやガバナンスの体制に着目する。医療機関側との間にある言語の壁が、金融機関側にほぼ共通する悩みである。
    首都圏の病院建て替えと経営者の個人保証に関わる問題が、その他の重要論点として確認された。経営者としての女性医師に対しては、男性医師と全く変わらない。
    もしくは、患者ニーズや長寿であることを踏まえて、ポジティブに評価している。
  • 銀行経営は近年厳しくなっているが、マクロ的要因としては、産業構造の変化等に起因する「預貸率」の低下や、金融政策等の影響を受けた「利ザヤ」の縮小がある。
  • 国内銀行の貸出残高の伸び率と診療報酬(本体)の改定率の推移を比較して見ると、継続的なプラス改定が医療機関等への貸出増加に貢献していることがわかる。
    診療報酬(本体)は医療機関経営を左右する重要な政策変数であり、銀行が診療報酬(本体)を医療機関経営に係るリスク指標としてモニターし、その動向を踏まえて、医療機関への貸出スタンスを調整していることが読み取れる。
  • 銀行が医療機関を地域の中核的事業体として支えていくためにも、診療報酬(本体)がしっかり確保されていかなければならない。医療を政策的に成長分野として位置づけるのであれば、その点でも診療報酬(本体)の着実な積み上げが求められる。
  • 医療業界に然るべく資金が円滑に流入することにより、産業としての医療分野の持続的成長が可能になる。加えて、診療の質の維持・向上のみならず、地域の雇用や経済発展にも資することが期待される。

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