ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 409 2018-04-26

社会保障と財政について
-国の2018年度予算を中心に-

 

  • 「骨太の方針2006」は、過去5年間(2002~2006年度)の社会保障費1.1兆円の削減を継続することとした。骨太は「機械的に5年間均等に歳出削減を行うものではない」としたが、毎年2,200億円の削減を求められ、「骨太の方針2009」で撤回されるまで3年間(2007~2009年度)継続し、「医療崩壊」といわれる事態を招いた。「骨太の方針2015」は、過去3年間(2013~2015年度)の社会保障費の伸び1.5兆円を継続することとした。骨太は「目安」としていたが、2018年度までの3年間、年5,000億円の伸びに抑制された。社会保障費の削減は大胆な改革によって行われてきており、無駄を省いてきたという程度の削減ではないので、それまでの基調を継続してその後毎年定額のキャップをかける手法は非常に厳しいものであった。
  • 「骨太の方針2015」からの3年間(2016~2018年度)で、社会保障費(国一般会計)の伸びを年5,000億円に抑制する目安は達成されたが、国・地方をあわせた足下の基礎的財政収支は悪化している。低金利にもかかわらず年10兆円程度の利払費(国)もある。
  • 企業の内部留保は過去最高水準である。設備投資に回っているわけではなく、現預金が増えており、従業員の賃金等に活用できる可能性がある。
  • 医療・福祉分野の国内生産額の伸びは産業の中でもっとも高い。医療・福祉分野は就業者数の伸びも顕著であり、2016年の医療・福祉分野の就業者数は就業者総数の1割強である。しかし、医療・福祉の1人当たり給与はまだまだ低迷している。医療・福祉は経済波及効果、雇用誘発係数も比較的高く、医療・福祉の現場の処遇改善をはじめ社会保障の充実を通じて経済成長を実現できることが期待される。

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