ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 410 2018-07-17

認知症をはじめとする高齢者の健康に関わるアンケート調査分析:
かかりつけ医と認知症介護経験に着目して

 

  • 本稿では、認知症をはじめとする高齢者の健康に関わる広範なトピックについて、現在の中高年層の認識を探ることを目的とし、民間保険会社が 40~70 代の被保険者を対象に実施した調査結果を二次的に分析した。着眼したのは「かかりつけ医の存在」と「認知症介護経験(含、身近に接した経験)」である。
  • 分析結果からは、(1)かかりつけ医の存在は、認知症をはじめとする高齢者の健康に関わる中高年層の意識や行動にポジティブな影響を及ぼすであろうこと、(2)認知症介護経験によって、認知症をはじめとする高齢者の健康に関わる中高年層の意識や行動に変化が生じること、が示唆された。
  • 今回の分析では、現在の中高年層が抱える健康についての不安や心配の正体を多面的に捉えることができた。そこから仮説として浮かび上がる現状とは、「政府は、認知症対策の国家戦略を掲げ、法に定める地域医療計画の中で認知症対策についても都道府県ごとに策定する枠組みをすでに整備している。しかし、残念ながらそれらの施策は、今ひとつ人々に認知されていない。そのためか、認知症になることを恐れる中高年層は多く、人々は認知症になったとき自分が置かれる状況についてはもちろんだが、むしろ国の公的保険制度の行く末を案じており、ともすれば人々の不安ばかりが先行している」との状況である。
  • 分析結果を踏まえて、認知症をはじめとする高齢者の健康に関わる人々の不安解消を政策の最優先事項とすべきとの提案を行った。具体的には、(1)政府が掲げる施策の周知そして地域住民のさらなる巻き込み、(2)公的保険制度の財政的な持続可能性に関わるネガティブキャンペーンの自重、(3)かかりつけ医を持つことの有用性に関するさらなる調査研究(特に、医学的視点のみならず、社会科学的な視点からの研究もなされるべき)の3点が重要だろう。

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