ワーキングペーパー
ワーキングペーパーNo. 497 2025-12-17
第3回 診療所の在宅医療機能に関する調査 (2025年)
ポイント
◆ 全国の在宅医療を実施している4,827診療所を対象に、在宅医療の現状や在宅療養患者の状況などを把握するため、アンケート調査を実施した(閉院などを除いた有効配布数は4,797施設)。1,403施設から回答(回収率29.2%)があり、調査時点で在宅医療を提供していた1,183施設を有効回答とした。
◆このうち73.4%は、在宅療養支援診療所(以下、在支診)として届出を行っていた。
◆在宅医療の開始時期は、2010年~2019年が31.7%で最も多く、2020年以降に開始した施設も18.8%であった。在宅医療を始めたきっかけについては、調査開始時期が最近の診療所ほど、「在宅医療に対するニーズの高まり」や「もともと在宅医療に興味・関心があった」といった理由が増加傾向にあった。
◆在宅医療の位置づけについて、外来の延長として実施している割合は、在宅医療の開始時期が最近の診療所ほど減少傾向にあった。在宅医療を中心とする施設や、在宅医療専門の施設の割合は増加傾向を示していた。
◆ 在宅医療に従事する医師数は、1施設あたり平均1.9人であった。機能強化型(単独型)は平均5.8人、機能強化型(連携型)は3.1人、従来型は1.3人、届出なしは1.1人であった。
◆2025年3月の実績報告によれば、1施設あたりの在宅療養患者数の平均は23.6人、平均訪問回数は58.3回であった。在宅療養患者の年齢構成比を見ると、85歳以上が約65%を占めていた。在支診の施設基準別にみると、機能強化型在支診は他の群と比べて、患者数および訪問回数が顕著に多い傾向が見られた。また、機能強化型は他の群と比べて、40歳未満や40~64歳までの比較的若い年代が占める割合が高い傾向がみられた。
◆訪問診療における医学管理や患者の状況への対応については、いずれも機能強化型在支診の対応可能割合が最も高かった。一方で、在支診の届け出を行っていない診療所でも「在宅酸素療法」は約65%、「膀胱留置カテーテル」や「ターミナルケア」は約42%が対応可能と回答した。過去に実施した第1回(2010年)、第2回(2016年)の経年でみると、ほぼ全ての項目で対応が可能であるとする回答が大きく増加しており、訪問診療の質そのものが、過去15年間で大きく向上していることが示唆された。
◆終末期・看取りへの対応について、対象全体では、「可能な範囲で行っている」が52.0%で最も多く、次いで「積極的に行っている」が37.7%、「病院と連携して行っている」が8.4%であった。
◆ACPの取組については、「可能な範囲で取り組んでいる」が最も多く46.9%で、「積極的に取り組んでいる」の14.4%を合わせると、61.3%が取り組んでいる状況にあることがわかった。「対応可能な人員(組織)体制がないため、取り組んでいない」が14.5%、「ニーズがないため取り組んでいない」が12.8%などの順であった。
◆医療・介護関係者との連絡手段は、「電話」(96.4%)、「FAX」(79.5%)、「情報提供書等の紙媒体」(67.1%)が中心であり、アナログな手段が主流であった。
◆一方で、ICTの活用においては、電話以外で最もよく使う連絡手段として、2番目に「多職種連携用SNS・コミュニケーションツール」が利用されており(11.2%)、その他のICTツールの利用もみられた。ICTツールが有用なコミュニケーション手段の一つとして定着しつつあることを示している。
◆被災時における在宅医療の対応については、「避難先が自院から近い場合は提供可能」とする回答が70.8%で最も多く、次いで「電話やオンラインにより、提供可能」が47.4%、「距離や避難先に関わらず、提供可能」が17.8%の順であった。BCPを「策定していない」が最も多く54.8%、次いで「今後策定する予定」が27.2%、「策定済み」が16.5%であった。
◆今後の在宅医療の取組の方針については、「現状維持」が最も多く62.7%、次いで「拡充を検討」が 20.5%、「縮小を検討」が 13.1%、「在宅医療の提供をやめる予定」が3.1%、「在支診のみをやめる」が0.2%であった。縮小・廃止についての理由を尋ねたところ、「医師の高齢化」が最も多く73.7%、次いで「24時間対応が困難になったため」が40.7%、「後継者がいない」が26.8%、「在宅医の不足」が10.0%などの順であった。
◆在宅医療を提供する上での課題については、「医師の高齢化」が44.1%で最も多く、次いで「24時間対応が可能な体制の確保」が35.2%、「在宅医療に従事する医師の確保」が34.1%、「経営の継続性」が32.9%、「緊急時の受け入れ態勢の整備」が32.2%、「家族の介護力」が31.1%、「診療所の後継者の確保」が30.7%などの順であった。
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