ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 415 2018-09-14

医療関連データの国際比較
-OECD Health Statistics 2018を中心に-

前田 由美子

 

  • 各国で医療制度が異なる上、すべての国がOECDの基準どおりに推計できているわけではない。したがって、国際比較は単純に行なえるものではないが、そのことを断った上で、いくつか注目される指標を採り上げた。
  • 日本の対GDP保健医療支出はOECD加盟国全体の中では上位であるが、アメリカを除くG7各国とはそれほど乖離した水準ではない。また、対GDP保健医療支出はGDPの増減によっても変化する。GDPと保健医療支出はどちらも重要な指標である。
  • 日本は急性期病床、リハビリテーション病床、長期ケア病床の定義が異なるので、諸外国と比較できない。たとえば日本では急性期病床は一般病床のことであり一般病床の回復期リハビリテーション病棟等を含む。すなわち、急性期病床の平均在院日数が諸外国と異なるのも当然であり、単純に比較してはならない。
  • 長期居住型施設も各国で定義が異なる。それにしても日本は長期居住型施設の定員数が少ない。日本は超高齢社会であるにもかかわらず、高齢者の「住まい」の整備が立ち遅れているのではないかと懸念される。
  • 日本ではOECD加盟国の中で人口当たりの薬剤師数がもっとも多い。2008年に薬学部が6年制に移行した数年後には薬剤師養成数が過剰であると指摘されていたが、いまだに薬学部設置の動きがある。
  • 日本はOECD加盟国の傾向と比べ、社会支出に比して税・社会保障負担が小さい。
  • 税負担か、保険料負担かという議論を尽くした上で、健康増進につながる目的税の導入を検討することも考えられよう。

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