ワーキングペーパー
ワーキングペーパーNo. 491 2025-02-28
地理情報システム(GIS)による 医療アクセシビリティ分析: 福岡県に
おける承継シミュレーション
◆本論文の目的は、現状および医業承継問題が顕在化した将来の福岡県内のプライマリ・ケアへのアクセシビリティ(地理空間的なアクセスのし易さ)を地図上に可視化することである。地理情報システム(GIS)を用いて、現状(2020年)の医療アクセシビリティと、診療所の医業承継アンケート調査データを用いた将来(2040年)の医療アクセシビリティを比較分析した。
◆医療機関から道のり30分圏内をアクセス圏と定義し、診療科を区別せずに一次的な外来診療を担う医療機関はすべてプライマリ・ケアを提供する医療機関と仮定した。シミュレーション分析では、福岡県庁のアンケート調査データを用いて、将来の承継状況に関して【楽観シナリオ】と【悲観シナリオ】の2つのシナリオを設定した。さらに、悲観シナリオにおいてランダムに診療所が閉院した場合をシミュレーションした分析も行った。
◆分析の結果、診療所の医業承継問題が顕在化しても、離島の例外を除いて、アクセシビリティ指標がゼロになる地域は出現しないことが分かった。医業承継問題が顕在化したとしても、福岡県ではプライマリ・ケアへのアクセス困難な地域が県内の広範囲に現れるような事態はまず起こらないと言える。ただし、悲観シナリオで承継問題が顕在化すると、県内全域でプライマリ・ケアの医療アクセシビリティが著しく低下すると予測された。
ダウンロード
(約 9 MB)