ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 420 2018-12-26

医療保険財政の現状と課題について

前田 由美子

 

  • 患者一部負担は一般では 3 割であるが、高齢者の増加や高額療養費制度により国民医療費に占める患者負担の割合は 10%超にとどまっている。国民皆保険の有り難みを実感するために、保険者から医療費財源通知のようなものを発行することを提案する(たとえば税金、後期高齢者支援金でいくらまかなわれているかといったもの)。
  • 後期高齢者支援金、前期高齢者納付金が被用者保険の保険者の負担になっている。前期高齢者については、雇用延長して被保険者本人を継続する。その分納付金は減るが給付費が増える。各保険者で予防・健康づくりへの取り組みによって給付費が抑制されていくことを期待したい。
  • 高額療養費の上限は所得(年収)に対して階段状に上がる。これを所得(年収)比例にすることを提案する。しかしそうすると高所得者の負担が大きくなる。そこで任意加入の保険を創設し(加入者は高所得者に限らないが)、加入者本人の負担分をまかなうほか、剰余金で巨額な高額療養費が発生した保険者に対する支援を行うことはできないだ ろうか(今後の課題)。
  • 日本では、有効性や安全性が確認された医療であって、必要かつ適切なものは保険適用することが原則である。先進医療は保険導入のための評価を行なうものであるが、適用後長い年月を経てもなお、先進医療にとどまっているものがある。先進医療という保険外併用療養に止めおくことは、保険外併用療養の安易な拡大(とりあえず保険外併用でやってみる)につながりかねない。先進医療を一定期間かつ一定数実施した後には、保険収載するか、先進医療から退出するかのルールが必要ではないかと考える。

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