ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 484 2024-09-05

地理情報システム(GIS)による 医療アクセシビリティ分析:山形県に
おける医業承継シミュレーション

清水 麻生

坂口 一樹

森 宏一郎

 

 

◆山形県におけるプライマリ・ケアへの地理空間的なアクセスのしやすさ(アクセシビリティ)を分析対象とし、地理情報システム(GIS)を用いて現状(2020年)のアクセシビリティと医業承継の見込みを反映した将来(2040年)のアクセシビリティを地図上に可視化し、比較・検討した
◆分析では、医療機関から道のり30分圏内をアクセス圏と定義し、診療科を区別せずに一次的な外来診療を担う医療機関はすべてプライマリ・ケアを提供する医療機関として取り扱った。将来シミュレーション分析にあたっては、山形県医師会が診療所を対象に実施した実態調査をもとに、将来の承継状況に関して2つのシナリオ(楽観シナリオと悲観シナリオ)を想定して分析を行った
◆分析の結果、診療所の医業承継の動向が、将来のプライマリ・ケアへのアクセシビリティに深刻な影響を与える可能性が高いことが判明した。医業承継問題が顕在化した場合、山形県全域でアクセシビリティが相当程度低くなるだろう。さらに、都市部において、将来のアクセシビリティの問題は深刻になることが予想される。現状と比較した場合、2040年のアクセシビリティは、中山間地域よりもむしろ山形市や鶴岡市といった相対的に人口の多い都市部において、著しく低下するとのシミュレーション結果が得られた
◆医業承継問題は深刻かつ喫緊の課題であることが可視化された。承継問題の顕在化は、地域医療の持続可能性を根底から揺るがしかねない。山形県では、既に診療所医師の高齢化や診療所の減少が始まっており、診療所の承継による地域医療の維持は大きな課題と言える。医業承継問題に対する具体的な施策の議論がさらに進展することが望ましい

ダウンロード  (約 2 MB)