ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 429 2019-04-03

医療の需要と供給について

前田 由美子

 

  • 医療需要の変化に対応して、需給バランスをとることの重要性が高まっている。今後の必要施策を探るため、公的統計をもとにマクロでの需要、供給の現状を俯瞰した。
  • 入院については、地域医療構想策定後かえって病床の動きが硬直化している。民間病院と競合している構想区域の公立病院で、かつ病床利用率が低い病院は、需要の縮小を冷静に受け止めるべきである。
  • 中小病院の中には診療所と分担して、かかりつけ医機能や在宅医療を担っているところもある、中小病院については病床機能だけでなく、かかりつけ医機能等も評価する必要があるのではないか。
  • 外来需要も総枠では中長期的に縮小するが、病院から診療所の機能分化が進んでいる。現在、初診料のみに紹介状なしの病院受診時定額負担が導入されているが、再診料等に拡大することで診療所の患者数は増加する可能性がある。
  • 一方で、長期処方により通院間隔が開いている。今後も長期処方やセルフメディケーションの進展次第で外来受療率はさらに低下するだろう。また、オンライン診療やオンライン服薬指導によって、対面診療が縮小する可能性もある。
  • 診療所医師が地域偏在、診療科偏在し、高齢化も進んで、かかりつけ医の確保が困難になりつつある。第一に、必要な地域では中小病院とかかりつけ医機能を分担できるよう中小病院を評価する(前述)。第二に、病院勤務医師が開業せずに退職を迎えているので、退職後医師のセカンドキャリアとして、たとえば診療所医師の応援、退職後医師の開業支援を進めてはどうだろうか。厚生労働省には起業支援という視点からの支援も求めたい。

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