ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 425 2019-04-26

女性医師の働き方の現状と課題
~インタビュー調査から~

 

背景

  • 日本医師会が実施した女性医師の勤務環境の現況に関する調査(2017年8月)では、病院に勤務している女性医師の全体像を把握した。しかし、大規模質問票調査だけでは病院勤務を離れたりキャリアコースを変更したりした女性医師の実情や支援策の有効性を把握することには限界がある。このためdepth interviewを行ってnarrativeな情報を収集し、大規模質問票調査を補完した。

ポイント

  • 女性医師20人および管理者・支援者等として10人にインタビューを行った。
    • とくに大学病院や公的病院等において、医師本人も管理者も労働法制を十分理解していない。一方、労働法制が医師の勤務流動性に対応しきれていない。
    • 医師間のタスク・シフティングにより、同僚医師の働き方がさらに過酷になったり、診療制限が発生したりしている。
    • 医師の職場には、今も「ガラスの天井」がある。
    • ハラスメントを受けている女性医師がいる。
    • 家庭内の性別役割分担意識は根強い。
  • 組織対応や、小さな配慮や身近な機会が効果的な支援となっている。
    • 復職枠の設定等組織的な勤務継続支援で高率に常勤復帰が可能となっている。
    • 身近な理解者、身近な仲間で話し合える機会が大きな支援となっている。
    • 女性医師は次々と独自の分野を開拓しつつある。
    • 完全に離職した人からは面談の受諾が得られなかったがそのうちの一部の方からは深刻な状況が文書等で寄せられ、伝えるだけでも救われると言われた。相談窓口が重要と考えられた。
  • 女性医師に限らず、医師の働き方、勤務環境の問題として捉え直す時期にきている。
  • 今回の結果が、女性医師支援センター事業等に活かされるのみならず、医師の働き方を考える上での基礎資料の一つとなることを期待する。

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