ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 482 2024-05-29

電子処方箋導入の現状と課題

渡部 愛

 

♦ 電子処方箋はオンライン資格確認のシステム基盤を活用して、2022年10月より試験運用を開始、2023年1月より正式運用が開始された。

♦ 電子処方箋システムは、2024年5月19日現在、75,002施設が利用申請を行い22,169施設(29.6%)が運用を開始している。運用を開始している施設のうち、薬局が約9割を占める。

♦ 全国の医療機関数および薬局数から電子処方箋の導入割合をみると、病院1.5%、医科診療所2.1%、歯科診療所0.1%、薬局31.7%となっており、医療機関での導入率は極めて低い状況である。

♦ 参加施設のみならず、地域の医師会、歯科医師会、薬剤師会、さらには行政や保険者も交え、地域全体で取り組み、面としての対応を行うことで電子処方箋の導入が地域医療への貢献の一つとなることが考えられる。

♦ 現在の国からの補助金、支援のみでは電子処方箋を導入し、運用することは非常に困難である。利用を推進していくためには作業負担の軽減、費用負担や支援の拡大が求められる。

♦ 機器準備に加え、安全性の高いネット環境の整備、電子カルテ等の既存システムの改修、医薬品マスターとの紐づけ作業やHPKIカードの確保等、導入するまでに膨大な準備作業が発生する。

♦2023年12月に電子処方箋の機能にリフィル処方箋や口頭同意、マイナンバーカードを活用した電子署名等の機能が追加された。

♦ 令和6年能登半島地震において、オンライン資格確認等システムの「災害時医療情報閲覧機能」(災害時モード)での閲覧や情報共有、電子処方箋が大いに役立ったが、マイナカードの活用が十分できない等、一定の課題が残った。電力や通信回線の確保のみならず、今後の災害時の対応や取組みについては再度、大幅な見直しが必要である。

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