ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 432 2019-07-18

公立・公的医療機関等の現状と課題

前田 由美子

 

  • 公立・公的医療機関等の経営概況を分析した。
  • 公立病院(都道府県・市町村・地方独立行政法人)には、2017 年度に8,083 億円の繰入金が投入されている。ランニングコストに対する繰入金だけで 1 病院当たり 7 億円に上っている。しかし、公立病院をはじめ、公立・公的医療機関等のうち、民間医療機関では担えない機能を担っている病院は、今後も引き続きその機能を維持することが期待される。当該構想で唯一無二の病院はもちろん、へき地医療や不採算地区の医療を担っている公立病院、重症心身障害児の医療を担っている国立病院などが挙げられる(以上、公的も準じる)。
  • 一方で、リハビリテーション医療のように民間医療機関が担う回復期機能等と競合している可能性がある分野については、当該公立病院のリハビリテーション機能が繰入金によって維持されているのではないかといった視点で確認する必要もあるだろう(リハビリテーション医療は一例)。
  • 各公立病院の繰入金の状況は、あまりわかりやすい形で公表されていない。骨太の方針でも、公立・公的が民間では担えない機能に重点化することが求められていることから、総務省が各構想区域の調整会議に公立病院の詳細データを提示すべきである。
  • 公的医療機関にも、地方公共団体から公立病院の繰入金に準じた運営費交付金等が投入されているケースがある。公的医療機関への運営費交付金等については、都道府県行政がとりまとめて調整会議の議論の素材として提供すべきである。
  • 政府(国)が出資する独立行政法人の病院のうち、国立病院では重症心身障害児の医療を担っているところがあるが、それ以外では赤字がつづいている病院が少なくない。もちろん地域の事情によるが、国立病院・労災病院・JCHO は税金や保険料で設置されてきた。必要がある場合には国として他に先んじて改革を進めるべきである。

2019年7月29日、以下の箇所を修正しました。
ポイント(3枚目)
(誤)2018年度に8,083億円
(正)2017年度に8,083億円

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