ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 433 2019-08-16

全国がん登録の概要(2019年1月公表値)を用いた
男女別・年齢別・地域別の分析

 

  • 2019年1月に公表された「全国がん登録の概要」を基に、男女別、年齢別にみたがん罹患数と割合、都道府県別にみたがんの年齢階級別罹患率、がん検診受診率や飲酒、喫煙等と都道府県別年齢調整罹患率の相関等について分析を行った。
  • 2016年に新たに診断された「がん」総数 は、過去最高値の995,132人。部位別にみた罹患数上位3位は、「大腸(結腸・直腸)(158,127人,15.9%)」、「胃(134,650人,13.5%)」、「肺(125,454人,12.6%)」(11P図 1)。男性の総罹患数は566,575人。部位別にみた罹患数上位3位は、「胃(92,691人,16.4%)」、「前立腺(89,717人,15.8%)」、「大腸(結腸・直腸)(89,641人,15.8%)」(11P図 2)。女性の総罹患数は428,499人。部位別にみた罹患数上位5位は、「乳房(94,848人,22.1%)」、「大腸(直腸・結腸)(68,476人,16.0%)」、「胃(41,959人,9.8%)」、「肺(41,634人,9.7%)」「子宮(28,076人,6.6%)」(12P図 3)。
  • 年齢階級別にみると、総数では、「乳がん」の罹患数は30代から増え始め、「45-49歳」と「65-69歳」という二つの山がある。「大腸(結腸・直腸)がん」、「胃がん」、「肺がん」、「前立腺がん」は40代以降増加(19P図 14)。男性は、「大腸がん」が30代から増加を始める(20P図 16)。女性は「乳がん」が30代から増加し、「45-49歳」でピークに達するといったん減少傾向となるが、50代後半から再び増加傾向となり、「65-69歳」で二度目のピークに達する(22P図 18)。罹患部位別に女性の年齢構成をみると、「子宮がん」、「卵巣がん」、「甲状腺がん」は45歳未満が約2割で、比較的若年層に多い(22P図 19)。
  • 15歳未満の全部位のがん罹患数は総数2,144人、男性は1,211人、女性は933人(23P図 20)。部位別にみると、総数、男性、女性とも「白血病」が最も多い(24~26P図 21~図 23)。
  • 思春期・若年世代(AYA世代:15歳~40歳未満)の全部位のがん罹患数総数は22,448人、男性は7,228人、女性は15,218人(27P図 24)。罹患数を部位別にみると、総数、女性では「乳がん」(28P図 25、30P図 27)、男性では「大腸(結腸・直腸)がん」が最も多い(29P図 26)。
  • 「全部位」の年齢調整罹患率を都道府県別にみると、総数、男性、女性とも西日本で高いが、総数と女性は九州地方(42P図 37、46P図 41)、男性は日本海側で高い傾向がみられた(44P図 39)。
  • 部位別にみていくと、「大腸(結腸・直腸)がん」の総数は北海道・東北地方(48P図 43)、「乳がん」の総数と女性は九州地方(52P図 47、56P図 50)、「胃がん」の総数は日本海側(58P図 52)、「肺がん」は総数、男性、女性とも西日本で高く、特に女性は九州地方で高い(70P図 63)、「白血病」は総数、男性、女性とも九州地方が高い(110P図 103、112P図 105、114P図 107)など、がんの罹患部位別にみた都道府県の年齢調整罹患率にはかなりの地域差があり、男女別でも特徴があることが示された。
  • がんの罹患部位ごとの都道府県別年齢調整罹患率の中には、喫煙率や飲酒率との相関があるものもみられた(喫煙率との相関あり;大腸がん、膵臓がん、食道がん 飲酒率との相関あり;大腸がん、乳がん、膵臓がん、食道がん)(119P~141P)。
  • これらの要素とがんの発生との因果関係については、さらなる検証が必要であるが、都道府県は、自分の地域で罹患率が高いがんの特徴を把握することが、これまでよりも可能となった。今後、正確なデータが蓄積されることにより、地域の特性に沿った、より精緻で効果的ながん予防対策が進められていくことが期待される。

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