ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 477 2023-11-22

鹿児島県において三次救急病院新設は
救急医療アクセシビリティをどう変えるか?
-地理情報システム(GIS)によるシミュレーション分析-

清水 麻生

坂口 一樹

森 宏一郎

 

ポイント

  • 本稿の目的は、鹿児島県内(九州本土)に三次救急病院を増設した際の将来(2040年)の救急医療アクセスのしやすさ(アクセシビリティ)の変化を地図上に可視化することである。
  • 既存の3つの三次救急病院(鹿児島市に2施設、奄美大島に1施設)に加えて、救命救急センターの設置候補として想定される4つの医療機関(医療機関A[鹿児島市]、医療機関B [鹿児島市]、医療機関C [霧島市]、医療機関D[鹿屋市]の4施設)を分析対象とし、それぞれの医療機関が三次救急病院となった場合のシミュレーション分析を行った。
  • 三次救急医療へのアクセシビリティの分析と評価にあたっては、医療機関から道のり 30km圏内をアクセス圏と定義した。九州全土のアクセシビリティを分析した後、鹿児島県の①三次救急病院へのアクセス範囲、②人口10万人当たりのアクセス可能な三次救急病院数を相対評価した数値をそれぞれ地図上に可視化した。
  • さらに、分析結果については、県内の三次救急医療へのアクセシビリティを検討する際に考慮すべき3つのポイント(①鹿児島市内の人口当たりのアクセス可能な病院数、②三次救急病院へのアクセス範囲に居住している人口の割合、③県総面積に占める三次救急病院へアクセス可能な範囲の割合)を挙げ、三次救急病院を増設しない場合と増設した場合の5つのシチュエーションごとに取りまとめた。
  • 分析結果から、三次救急病院を増設する際に検討すべき選択肢としては、①人口集中地域の鹿児島市における三次救急医療へのアクセスを手厚くするという選択と、②鹿児島県における三次救急医療にアクセス可能なエリアを拡大するという選択の2つが考えられる。この選択にあたっては、それぞれの地域の救急医療における連携状況の実態に加えて、各医療機関が保有する人員や病床、予算、それらの調達の容易さ等を総合的に検討して、設置場所を判断すべきである。
  • 将来の人口減少を考慮すると、上記2つの選択肢に加えて、救命救急センターを増設しないという選択肢も検討しなければならない。

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