ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 438 2019-12-11

「第22回医療経済実態調査報告-令和元年実施-」について

 

  • 一般病院の損益差額率は▲2.7%であった。医療法人では病院長給与を引き下げたものの、チーム医療が進む中で職員数が増加し、給与費率は横ばいであった。また医療法人の3分の1が赤字であった。一般病院の減価償却費と設備関係費の合計の比率は、どの開設者でも低下しており、設備関係コストが抑制されていることがうかがえた。
  • 一般診療所は医業収益(収入)が全体で横ばいであった。医療法人は院長給与を引き下げたものの看護補助職員等の増加により、入院収益なしの損益差額率は横ばいであった。入院収益あり(有床診療所)は、医業収益(収入)の減少が影響して損益差額率が低下した。また、一般診療所(医療法人)の3分の1が赤字であった。
  • 在宅療養支援診療所では、医業収益(収入)は伸びたが、給与費をまかないきれず、在支診以外と比べて損益差額率が低い。在宅医療が推進される中、報酬が十分ではない。
  • 一般病院では看護職員、医療技術員等が増加した。医療法人では医療関係職種の1人当たり給与費が国公立に比べて100万円前後かそれ以上に低い。1人当たり給与は、年功序列型であれば平均年齢や勤続年数の影響も受けるが、医療法人では魅力ある給与水準を提示できないために医療関係職種の採用に苦慮し、タスクシフティングが進まない懸念がある。
  • 公立病院や国立病院機構、済生会、日赤などの公的医療機関はもとより、民間医療機関においても病院グループを形成しているところが少なくない。「医療経済実態調査」は調査対象となった病院単独のデータを要求しているが、病院グループの場合、本部一般管理費の按分は一律の計算式で行なわれているわけではなく、結構無理があると考える。そこで、法人全体のデータを収集し、「病院のみ型」「病院と介護施設経営型」などにグループ分けして分析することを提案したい。

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