ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 440 2020-01-27

日本医師会 医業承継実態調査:医療機関経営者向け調査

 

  • 日本の医業承継に関する現状把握を目的とし、全国の民間医療機関およそ4,000 施設(病院、診療所)の現経営者を対象に、アンケート調査を実施した。回収数は 1,088 件(回答率 27.3%)であった。
  • 調査結果からは、昨今の医療機関経営において、かつてに比べて第三者承継や M&A となるケースが増えており、今後も増加傾向が続くであろう状況が明らかとなった。現経営者である回答者の年齢階層が若いほど、第三者から承継したとの割合が高く、第三者承継や M&A を承継プランの選択肢としている割合が高かった。また、回答者のうち第三者承継した割合は5.7%だったのに対し、第三者承継を承継プランの選択肢としている割合は38.2%であり、事業売却・M&A を選択肢としている割合は 22.2%だった。
  • 承継プランの検討に当たって現経営者が不安に思う三大事項は、「信頼できる相談先が見つかるか」、「後継者候補を自力で探せるか」、「妥当な金額で事業譲渡できるか」であることが分かった。これらに対応できる相談先の受け皿が求められる。本稿では、日本医師会と都道府県・郡市区医師会のネットワークがその受け皿となる方向性を提言した。
  • 所在地やその人口規模に関わらず、対象とした医療機関の約4割が選択肢のひとつとして「閉院」を考えていた。特に、無床診療所の約5割、有床診療所の約4割が閉院を選択肢のひとつとしていた。現状、診療所の数は漸増傾向にあるが、将来的に承継問題が顕在化すれば、日本各地でプライマリ・ケアの維持・継続が困難になる事態も十分想定される。閉院を考える診療所の内実については、その原因究明も含めて、さらなる調査研究が必要である。あわせて、診療所の第三者承継・M&A がし易い環境を整備し、今ある診療所が地域に残る可能性を高める手段を講じる必要がある。

ダウンロード  (約 3 MB)