ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 474 2023-08-18

都道府県医師会・郡市区医師会における学校保健の取り組みに関する考察~学校保健をめぐる教育委員会との連携・健康リテラシー涵養の取り組み・学校医報酬の認識等に関するアンケート調査結果から~

和田勝行

 

ポイント

◆ 現代社会において、児童生徒をとりまく健康課題は、感染症、アレルギー、心の健康、性、デジタル機器の利用等、極めて複雑かつ多様なものとなっている。
◆ これらの課題に対応するためには、児童生徒が自分自身の健康について主体的に学び、正しい情報を選択出来るようになるとともに、将来も適切な行動を継続していくことが出来る、いわゆる「健康リテラシー」を身に付ける必要がある。健康リテラシーの習得のためには、学校における保健教育が極めて重要であるが、教師による教育に加え、学校医等が外部講師として、医療者の視点から参加することが効果的である。
◆ このような保健教育の実現のためには、医療側と教育側の連携が必要であり、日本医師会においては文部科学省との連携を強化してきたところであるが、都道府県医師会・郡市区医師会と都道府県教育委員会・市区町村教育委員会との連携の強化も重要である。
◆ このような連携を推進するためには、地域の状況を把握・分析し、日本医師会として適切な情報発信を行う必要があることから、都道府県医師会・郡市区医師会に対し、教育委員会との連携状況や健康リテラシー涵養に係る取り組みについて、また学校現場での連携の中心となる学校医の報酬に関する認識等について、アンケート調査を行った。
◆ アンケートの結果、都道府県医師会・郡市区医師会と教育委員会との連携は、日本医師会のこれまでの取り組みもあり比較的進んでいることが分かった。また、子供の健康リテラシーを涵養することの重要性について、都道府県医師会・郡市区医師会とも高い関心があることが分かった。一方、学校医の報酬は地方交付税によって措置されていることや、適切な報酬を求めるには教育委員会のみならず首長等との交渉が効果的であることについて、都道府県医師会・郡市区医師会とも認識に課題があることも分かった。日本医師会としては、各医師会の取り組みを後押しすべく引き続き積極的な情報発信を行うことが望ましいと思われる。

 

ダウンロード  (約 2 MB)