ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 457 2021-11-12

地理情報システム(GIS)による医療アクセス分析:
滋賀県のケーススタディ

清水 麻生坂口 一樹森 宏一郎

 

 

  • 本調査研究の目的は、現在(2020年)および将来(2035年)における滋賀県の医療へのアクセシビリティを評価し、その結果をマップに可視化することである。将来(2035年)の分析では、既存の調査結果を基に、県内の診療所で医業承継問題が顕在化した場合のシミュレーションを実施している。
  • 本稿では、三次救急医療、外来医科医療へのアクセシビリティを評価している。医療アクセシビリティの定義には、道路網、疾患の特性等を踏まえて、アクセス圏を設定した。三次救急医療では道のり30km、外来医科医療では道のり30分(距離換算すると道のり約15km)をアクセス圏とした。これらのアクセス圏を基に、実際の道路情報(距離および所要時間)を用いて、アクセシビリティの算出を行った。
  • 三次救急医療へのアクセシビリティをみると、滋賀県の高島市と甲賀市の一部地域に、三次救急病院へのアクセシビリティが確保されていないエリアがある。ただし、三次救急病院にPCI実施医療機関を含めて分析すると、滋賀県内はほぼアクセシビリティが確保されている。人口当たりのアクセス可能な医療機関数で見ると、愛荘町や甲良町付近等(県内では比較的人口が少ない地域)で比較的高くなっており、県庁所在地である大津市付近の都市部が顕著に高いというわけではない。
  • 外来医科医療では、アクセス可能な医療機関がゼロのエリアは見られない。人口当たりの医療機関数でみると、高島市が比較的高くなっている。人口当たりの常勤換算医師数でみると、大津市や草津市付近のいわゆる都市域のアクセシビリティが高くなっている。また、仮に将来、診療所の医業承継問題が顕在化した場合、人口減少を考慮しても、県内ほぼ全域で外来医科医療へのアクセシビリティが低下することが予想される。
  • なお、本調査研究は、将来の滋賀県の地域医療を考える上での有用な一つの資料を提供することを想定している。そのため、今後、滋賀県の地域医療を担う滋賀県医師会関係者や滋賀県庁担当者と連携して、医療アクセシビリティの可視化地図の改善・追加分析等を進めていきたい。

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