ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 441 2020-01-27

地理情報システム(GIS)による医療アクセスの分析:
秋田県のケーススタディ

 

  • 本調査研究の目的は、地理情報システム(GIS)を用いた秋田県の医療アクセシビリティの評価およびその結果の地図上への可視化である。評価には、現状に加えて、診療所の事業承継の将来予測に基づくシミュレーション分析を含めた。
  • 秋田市エリアおよび大仙市・横手市エリアでは三次救急病院へのアクセシビリティはあるが、それ以外の地域では、人口が存在するにもかかわらず、道のり30㎞圏内にアクセス可能な三次救急病院が一つもない。また人口を加味すると、大仙市・横手市エリアと秋田市のアクセシビリティにあまり差はない。
  • プライマリ・ケアへのアクセシビリティでは、県庁所在地である秋田市エリアでアクセス可能な医療機関数が多い。他方、中山間地域を中心にアクセシビリティが低い地域が広がっており、アクセス可能な医療機関がない場所もある。人口を考慮すると、県内都市部(能代市、由利本荘市、横手市、大仙市)のアクセシビリティは比較的高いが、秋田市のアクセシビリティは必ずしも高くないことに留意したい。将来、医療機関の所在と数が現状維持されれば、人口減少によってアクセシビリティは向上する。しかし、比較的早い段階で承継問題が顕在化した場合、県内のほとんどの地域でアクセシビリティが大きく悪化する可能性がある。
  • 産科・婦人科そして小児科ともに、県庁所在地である秋田市エリアでアクセス可能な医療機関数が多い。中山間地域を中心にアクセシビリティが低い地域が広がっており、アクセス可能な医療機関がない場所もある。産科・婦人科ではアクセスゼロの地域がかなりある一方、小児科ではアクセスゼロの地域はほとんどない。他方、小児科ではどこかに突出してアクセスが良い地域もない。産科・婦人科でも小児科でも、承継問題が顕在化した場合、現状よりもアクセシビリティが大きく悪化する可能性がある。
  • 現在、秋田県では二次医療圏の見直しが提案されている。見直し議論にあたって、医療提供体制のマネジメントに加えて、人口分布や交通手段等を含めた地理的条件を考慮する必要がある。そのため、地理情報システム(GIS)を用いた可視化地図は有用となる。現状と将来のアクセシビリティ分析結果をベースに、医療の提供体制を考えるための新たな二次医療圏を構築する必要があるだろう。

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