ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 445 2020-07-14

ICTを活用した医師に対する支援方策

 

医師の働き方に資するICT活用に関する臨床研修病院調査、専門性確保と研鑽の場である医学会におけるICT活用の実態調査、D to PおよびD to Dの遠隔医療事例の収集、医師人材マッチングの現状の把握、および関連する海外情報の収集等を行い、これらをもとに、①医師の勤務環境改善のためのICT活用、②医師の専門性確保のためのICT活用、③遠隔医療の活用による医師の働き方支援、④医師と職場のマッチングのためのICT活用における課題と可能性を検討した。

電子カルテ情報へのアクセスは極めて制限的であり、医学会へのWEB参加やe-Learning推進も2019年3月時点ではごく少数にとどまり、その主な理由は『セキュリティ対策』と技術的財政的支援であった。なお、2020年2月以降の新型コロナウイルス感染症対策として、多くの学会、各種会議や大学の講義等もWEBによるオンデマンドまたはWEB会議形式で行われ始めた。この急速な変化を一過性と捉えず、効果とデメリットを検証し、新たなICT活用につないでいくべきである。

D to Pのオンライン診療は医師の働き方としては対面診療と変わらず、むしろ短期的には導入に際しての説明や確認等に時間を要し、直接的な働き方支援とはならない。しかし、患者の治療継続を支援する手段となることから、長期的には医療支援となり得ると考えられる。なお、2020年2月以降の新型コロナウイルス感染症対策の一環として時限的・特例的に実施対象が拡大された。これについても課題と効果を医師の働き方の観点からも検証すべきである。

D to Dによる診療支援は、事例取材の結果、医師不足地域、専門医不足領域において日常診療上の支援として効果があることが明らかとなった。また、D to DへのSNS利用について、セキュリティの観点から情報を整理した。

医師人材バンクは、コーディネーターによるマッチングをきめ細かく行うために、公的にマルチ・デバイスに対してのプッシュ通知、チャット機能を用いてのプラットフォームの構築を検討した。

セキュリティへの懸念や財源の問題から、医師の働き方支援としてのICT活用もこれまでは制限的であった。しかし、新型コロナウイルス感染症対策の一環として、日本の社会全体のICT活用の状況が激変している。医師の働き方支援の観点からも2020年の経験を早急の検証し、課題を克服して、積極的にICTを活用していくことが望まれる。

本研究は、2018-2019年度の2か年の厚生労働科学研究費補助金 政策科学総合研究事業の臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究事業「ICTを活用した医師に対する支援方策の策定のための研究」(H30-ICT-一般-003)として実施した。

本文 (約1,747KB)

資料1、2 (約623KB)

資料3 (約3,384KB)

資料4~6 (約2,748KB)

資料7 (約581KB)