ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 451 2021-01-21

ビッグデータからみた生活習慣病(NCD)の実態 ~匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報データベース(NDB)による臨床像の解析~

 

  • NDBは、診療報酬請求に基づいて年間約18億件ずつ積みあがり4,000億レコードを超える世界最大級のReal World Dataの一つであり、これを活用することによって、疾患治療の実態について、広くわが国全体の動向を把握できる可能性がある。
  • 生活習慣病NCD克服は健康寿命延伸のための最優先課題である。NDBから医薬品、実施した検査、手術、指導管理の情報を用いて患者を推定し、治療動向をみた。
    1. インスリンまたは糖尿病治療薬のいずれかを使用している者を糖尿病治療者と推定して、2010年と2016年の年齢階級別男女別患者数をみた。人口あたりでみると、2016年は全体としては2010年よりも糖尿病治療者数はやや減少している。
    2. 糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症についてスクリーニングの実施状況と治療状況を2010年と2016年の都道府県別にみた。いずれもスクリーニングの実施状況は進み、検査治療ともに均てん化の傾向がみられる。
    3. 脳梗塞の治療状況を2010年と2016年の都道府県別にみた。急性期脳梗塞治療の割合は増加し、都道府県間の均てん化も進んでいる状況が把握できた。。
    4. 40-64歳の働く世代では糖尿病がある場合、脳梗塞のリスク比は11を超え、急性心筋梗塞のリスク比は13を超えていた。
  • 課題
    1. NDBでは治療状況により患者の動向の一端を把握することができる。
    2. 単純に登録された病名から実態を把握することはできず、一方で治療内容が網羅されていないと過小推計になるため、臨床医の視点での条件設定が必要である。また、治療法の進化に伴い、治療適用範囲も異なってくるため年次推移の解釈には留意が必要である。
    3. 臨床医学において、国際的にビッグデータを動員したReal World Dataの解析研究が増えてきているなか、わが国においても、広く、臨床研究領域でのNDBの活用を促進すべきである。NDBの利用については法的位置づけが見直され、ガイドラインも改訂されたが、患者数や治療実施の動向等、臨床データとしての活用についても、NDBの特性を踏まえたうえで、定期的に観測する体制が望まれる。そのためには、国として、臨床を反映するシステム側の専門家による支援体制を構築するよう働きかけることも必要であろう。

ダウンロード  (約 888 KB)