ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 144 2007-07-09

後期高齢者の死亡前入院医療費の調査・分析

 

◆ 高齢者が死亡前30日以内に使う入院医療費(以下、死亡前入院医療費)は、高齢者医療費全体の3.4%と推計された。
◆ 死亡前30日以内1人1日当たり入院医療費(以下、死亡前入院医療費単価)は平均31.8千円であり、後期高齢者の入院医療費平均(死亡以外の退院も含む)の1.48倍であった。死亡までの入院期間が7日未満のグループにおいて、もっとも高いが、このグループは入院期間自体が短いので、死亡前入院医療費は低い。
◆ 死亡前入院医療費の内訳を見ると、死亡までの入院期間が7日未満のグループのみ技術料等が50%を超えており、他のグループでは入院料等が60%以上を占めていた。
◆ 疾患別の死亡前入院医療費は、悪性新生物で平均値が高かった。心疾患、脳血管疾患は、平均値は悪性新生物を下回るが、患者個人別では突出して高いケースも見られた。
◆死亡前入院医療費は、後期高齢者の入院医療費平均と比べると高い。しかし、急性期では、あらゆる手を尽くして死亡にいたったとしても死亡前入院医療費は大きくなく(死亡までの入院期間が短いため)、また延命できた場合には、その後の医療費は落ち着くので、医療費抑制目的で治療を中止する理由は見出せなかった。
◆ 慢性期であって入院期間90日、あるいは180日以上のグループの終末期入院医療費は、一定の値に収斂されてくる。このグループにおいてのみ、医療および医療費のあり方について検討の余地があると考える。

ダウンロード  (約 316 KB)