ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 175 2008-10-15

国民医療費の伸びの要因分析

 

  • 厚生労働省は医療費の伸びについて、診療報酬改定、人口増減、高齢化以外の要因を「医療の高度化等の自然増」と説明している。しかし実際には、疾病構造や受療率の変化、その背景にある医療制度改革などのすべての要因が含まれる。「医療の高度化」を強調するのは不適切である。
  • 本稿では、人口増減と高齢化から推計される医療費の伸びと、実際の医療費の推移を比較した。
  • 脳血管疾患(入院)、虚血性心疾患(入院)は、高齢化による医療費増が見込まれたが、高齢者の受療率低下が顕著であり、実際の医療費は、人口増減と高齢化から計算した医療費を下回った。特に虚血性心疾患は、高齢者の平均在院日数の低下が顕著であった。
  • 悪性新生物は、入院で平均在院日数の短縮化が進んだ一方、入院外の患者が増加した。入院外では他の傷病に比べて高齢者の単価が上昇している点が特徴的であり、外来化学療法など、医療の高度化の影響もあるのではないかと推察された。
  • 精神及び行動の障害では、若年層の受療率が増加し、医療費が予測以上の伸びを示した。

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