ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 459 2021-08-12

認定医療法人制度に関する考察

 

認定医療法人制度の活用を検討中の医療法人向けの参考情報をまとめることを目的に、同制度の実務に関わった経験豊富な複数の税理士への直接インタビューを実施した。これにより得られた情報を体系的に整理し、知見を抽出し、基本的な考え方を考察した。

 

  • インタビューでは、持分放棄及び同制度活用の成立事例・不成立事例の紹介と、それぞれの適否判断のポイント、メリット・デメリットについて意見を聴取した。
  • 紹介事例では、相続税対策に苦慮する場合が持分放棄に適し、その上で医療機関の存続を前提に考えるには同制度活用が有効であることが示された。
  • 同制度を活用した持分なし医療法人への移行に関する課題として、持分放棄について財産権放棄による不利益や経営への影響力低下等を懸念する出資者からの合意の取り付け等や、同制度活用について、以下の留意点(同制度の運営に関する要件等)を遵守できる体制づくり等が意見で挙げられた。
    1. 「社会保険診療収入等が全収入金額の80%超である」に抵触しないこと。
    2. 法人関係者に特別利益を与えないこと。
    3. 期末の遊休財産の額が事業費用の額を超えないこと。
    4. 役員報酬等の上限(原則3,600万円)に関わる問題がないこと。
  • 以上を踏まえ次の通り考察した。
    • 改正後の同制度により、医療法人が贈与税を支払うことなく、かつ同族経営をあきらめることなく、「持分なし医療法人」に移行する選択肢ができた。
    • ただし、持分放棄するか、そして同制度活用を選択するか否かは、あくまで個別に判断すべきである。判断のための検討手順は、以下の通りである。
      1. 「相続意思のある相続人」「相続人範囲」「想定される相続税」「相続人及び医療法人の支払い能力」を順次確認する。
      2. 想定相続税額の引き下げ策を検討する。
      3. 持分放棄を検討する。
      4. 同制度を活用する場合の自院の問題点を把握する。
      5. 同制度を活用する場合としない場合を比較検討する。

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